スキップしてメイン コンテンツに移動

住基ネットに御用心(その2)

住基ネットに御用心(その2)

やぶれっ!住基ネット市民行動の原田です。

見えなくなりつつある住基ネットですが、しっかりと使われています。

住基ネットからの本人確認情報(住所・氏名・性別・生年月日、住民票コード)の提供は、マイナンバー制度が進むとともに広がってきています。


マイナンバー制度では「住民票関係情報」は情報提供ネットワークシステムで提供されますが、これは続柄などの情報で、住所・氏名等本人識別できる情報は情報提供ネットワークシステムでは提供できないので、別途J-LIS(地方公共団体情報システム機構)に照会し提供を受けることになっています。

どこに何件提供しているかは毎年8月に官報に公告され、今年は8月30日の官報(号外第103号)117頁~124頁に掲載されています(「地方公共団体情報システム機構における機構保存本人確認情報の提供状況に関する公告」)

当初から年金・恩給関係の利用がほとんどでしたが、福祉給付や奨学金事務などのほか、当初はなかった税関係の提供が増え、資格関係(司法試験、電波法、建築業法による技術検定・監理技術者資格者証、不動産鑑定士、建築士など)の事務にも提供されています。


当事者の知らないうちに、本人の意思に反して住民票の住所等情報が記載されていくということには、不快感だけでなく、DV・虐待等被害につながるのではないかという不安をもっています。住民票記載の「性別」が記載されると、性同一性障害のある方にとって、意に反した公表(アウティング)になる可能性もあります。

10月7日の朝日新聞一面で、「DVで転居、後絶たぬ漏洩 自治体内の連携・共有不足 26都道府県、10年で40件超」という記事が掲載されていましたが、
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14207916.html?_requesturl=articles%2FDA3S14207916.html&rm=150

同じ自治体の中でさえ、DV・虐待等被害の情報が加害者に伝わらないよう「支援措置」を講じていても、通知などに記載されて加害者に伝わる事件が続いています。その結果被害者が転居することになります。

※「支援措置」とは、住民票の写しの交付や閲覧を制限する措置です。
 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html

マスコミの論調は「自治体内の連携・共有不足」(税務や福祉など住民記録以外の部署に「支援措置」該当者であることが伝わっていない等)ばかりですが、住基ネットや情報提供ネットワークシステムによって、自治体を超えて住民票情報や住所の推測できる情報が提供される場合、提供先には「支援措置」該当者であることは伝わらないため、加害者に伝わらないようにする配慮がされなくなります。

該当するケースはレアかもしれませんが、DVや児童・高齢者・障害者虐待やストーカー被害は、次々と防止法が成立しても増加しつづけており、レアとも言えなくなりつつあります。
そしてたとえレアでも、発生すれば殺人事件も起こす危険性があります。

国立市が2002年に住基ネットに接続後に切断した理由の一つも、このDV等被害の危険性でした。

総務省はこの危険性を認識しており(マイナンバー制度の制度設計をしたときには認識していなくて、あとづけで対策を継ぎ足していると私は思っていますが)、情報提供にあたり自動的に提供せずに職員が確認する等の対策を指示しています。

※やぶれっ!住基ネット市民行動のサイトに、把握できている国の通知等を掲載しています。
 http://yabure.kokuseki.info/cns/non-disclosure/


が、マスコミがこの危険性を報じた例は、見たことがありません。
唯一報じているのは、日経のサイトITpro(現日経xTECH)です。

「使えないマイナンバー 機能不全のマイナンバー情報連携、DV被害者に影響も」(ITpro2017/12/18)
 http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/17/121100574/121400001/?rt=nocnt
※有料会員登録をしないと全文が見れないので、報じている末尾を転載します。

「さらに自治体関係者が懸念するのは、ドメスティック・バイオレンスなど(DV)の被害者の個人データを扱うルールだ。DV被害を受けた人らが別の自治体に避難して何らかの行政手続きをした際に、同世帯だった加害者のマイナポータルに照会記録が残る恐れがあり、「被害者の避難先が知られてしまいかねない」(自治体職員)。
 国は2017年8月になって、情報連携で自動的に照会できないよう設定する「自動応答不可フラグ」や、マイナポータルで記録を表示しない「不開示フラグ」の設定を徹底するよう通知した。ただ自治体関係者によると、もともとDV被害者への対応は自治体ごとに異なるので、国の通知で事足りるとはいえない。最悪の場合はDV被害者に影響が及ぶ恐れも否定できないという。
 ひとたび問題が起きれば巨費を投じて構築されたマイナンバー制度の信頼性が根本から崩壊しかねない。 」


マイナンバー違憲訴訟横浜地裁判決でも述べているように、情報ネットワークへの接続対象となる個人情報の内容、性質、とくに個人のプライバシーとして秘匿が求められる程度は様々です。
国民の権利を守るためのマイナンバー制度というのであれば、その一人一人の事情(「訳あって」)に応じて提供と秘匿をコントロールする仕組みが必要です。


********************

        原 田  富 弘
     tom-h@k7.dion.ne.jp

 やぶれっ!住基ネット情報ファイル
 http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/

『共通番号の危険な使われ方-
マイナンバー制度の隠された本質を暴く』
(現代人文社\1700+税 )

『マイナンバーは監視の番号-
 徹底批判まやかしの共通番号制度』
 やぶれっ!住基ネット市民行動編
  (緑風出版 \2000+税)

  『私を番号で呼ばないで』
 やぶれっ!住基ネット市民行動編
    (社会評論社 \2000+税)

コメント