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朝日新聞が修正した「吉田清治証言」を検証する!!

朝日が修正した「吉田清治証言」は「河野談話」作成のためには全く使われていない

"MLピースサイクル広島"


河野談話検証報告を検証する

8・6ヒロシマ平和へのつどい代表田中利幸さん(広島市立大学平和研究所教授)の
『河野談話検証報告を検証する』がピース・フィロソフィー・センターのブログに
掲載されています。

http://peacephilosophy.blogspot.ca/2014/09/the-yoshida-seiji-testimony-that-asahi.html

緊急寄稿「河野談話検証報告を検証する」田中利幸

日本軍「慰安婦」問題をはじめとする戦争責任問題についての著作や論文が多数あり、
世界各国で講演する広島市立大平和研究所教授の田中利幸氏による緊急・重要投稿です。
現在の「朝日新聞叩き」でどさくさ紛れに日本軍「慰安婦」の史実さえ否定しようとする
勢力に惑わされてはいけません。忙しい人も以下の一点だけは必ず押さえてください。

朝日新聞が訂正した「吉田清治証言」は「河野談話」作成のためには全く使用されていません。
したがって「吉田清治証言」報道をいまさら朝日新聞が修正したところで「河野談話」には
全く影響はなく、ましてや「河野談話」を修正したりこれに代わる新たな「談話」を発表する
理由などには全くなりません。
この点について田中氏の本文の最後の方から重要部分も抜粋しておきます。

最近、吉田清治の虚偽証言に基づき朝日新聞が1982年9月以来たびたび記事を
発表したことに対して、訂正記事を発表し、最終的に謝罪を行った。すでに述べたように、
この吉田証言は河野談話作成のためには全く使われていない。当時の官房副長官
だった石原信雄も、最近のテレビ・インタヴューで、吉田証言には虚偽の疑いがあった
ため河野談話作成のための資料としては使わなかったことをはっきりと認めている。
にもかかわらず、朝日が訂正記事を発表するや、あたかも河野談話は吉田清治証言に
のみ依拠して作成されたかのような発言が安倍支持一派から次々に出され、「強制」は
デッチアゲであるという非難の声をあげている。朝日新聞が30年余りたった現在になって
ようやく誤りを認めて関連掲載記事を取り消したが、もっと早く訂正・謝罪をしておくべきであった。この点、朝日新聞に大きな落度があったことは言うまでもない。しかし当時、同じように
吉田清治虚偽証言を信じて報道した読売新聞や共同通信はほとんど非難を受けず、
朝日新聞だけが攻撃のマトになったことに深い違和感を感ぜずにはいられない。
これも「河野談話検証」と連結した「河野談話空洞化作戦」の一つであろう。
その最終目的は、河野談話を正式に無効とし、新しく「安倍談話」なるものを発表し、
それを日本政府の公式見解としてしまうことである。

朝日新聞叩きを読みながら「あら、『慰安婦』の強制はやはりなかったのかしら。
証言も嘘だったのかしら」などと思ってるかもしれない人々ー週刊誌の中吊り広告的な
扇動的な情報に惑わされず、冷静に信頼できる情報源を判断してください。
日本軍『慰安婦』について史実を確実な証拠と共に学べるサイトの一つとして紹介します。
日本軍「慰安婦」-忘却への抵抗・未来への責任

http://fightforjustice.info/

まずこの田中氏の寄稿を読むところからスタートしてください。今こそ日本人の良識と
良心が問われています。またこの投稿の転載、投稿からの引用には初出として必ず
この投稿のURLを記してください。 @PeacePhilosophy
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河野談話検証報告を検証する
田中利幸

「河野談話」空洞化を意図して作成された検証報告

2014年6月20日、日本政府は、旧日本軍による「従軍慰安婦」への関与と強制性を
認めた1993年の河野洋平官房長官談話の「検証結果」と称して、「慰安婦問題を巡る
日韓間のやりとりの経緯:河野談話作成からアジア女性基金まで」と題する報告書を公表した。
検討委員を務めたのは、但木敬一(元検事総長、秋月弘子(亜細亜大学教授国際法専攻、
有馬真喜子(ジャーナリスト、河野真理子(早稲田大学教授国際法専攻、
秦郁彦(現代史家の5名。

日本軍性奴隷制問題を検討するためには関連の歴史的専門知識が必要とされることは
言うまでもないことである。しかし検討委員の中で歴史家は秦郁彦ただ一人で、
しかも秦は「女性の強制連行は基本的にはなかった」と、安倍一派に近い見解をとっている
人物である。報告書の内容は第1部「河野談話の作成の経緯」と第2部「韓国における
『女性のためのアジア平和国民基金』事業の経緯」に分けられているが、
冒頭で河野談話を再検討しなければならなくなった理由だとして、次の3点を挙げている。

「河野談話については2014年2月20日の衆議院予算委員会において、
石原元官房副長官より、1.河野談話の根拠とされる元慰安婦の聞き取り
調査結果について、裏付け調査は行っていない、2.河野談話の作成過程で
韓国側との意見のすり合わせがあった可能性がある、3.河野談話の発表により、
いったん決着した日韓間の過去の問題が最近になり再び韓国政府から提起される
状況を見て、当時の日本政府の善意が活かされておらず非常に残念である旨の
証言があった。」

ここでも、検討の焦点はあくまでも元「慰安婦」証言の信憑性であり、歴史的事実に
関する他の関連資料の検討は最初から全く考慮に入れるつもりがないことを明らかに
している。そうした批判が出るであろうことを最初から予測してであろうが、
「検討チームにおいては、慰安婦問題の歴史的事実そのものを把握するための
調査・検討は行っていない」という一文を最後に入れている。つまり「歴史的事実の
検証」は最初からこの検討グループの目的ではないことにしてしまうことで、
批判をかわそうとしているのである。談話の内容を検討するのであれば、
談話作成の土台となった最も重要な歴史的事実に関連する資料を詳細に
検討するのが当然且つ必然の手続きであるが、それについては一切調査・検討は
行わないというのである。これがゴマカシでなければ、いったい何のための検証か。
しかも「いったん決着した日韓間の過去の問題」を再三にわたり蒸し返し、
河野談話への攻撃を執拗に行ってきたのは安倍晋三本人と安倍を支持する
右翼勢力であるにもかかわらず、厚顔無恥にも「最近になり再び韓国政府から
提起される状況」になったと主張し、あたかも韓国側に責任があるかのごとく
主張している。報告書の冒頭のこの1節に目を通すだけで、報告書内容が
どのようなものになっているのかは大かた推測がつくというものである。

第1部は「河野談話の作成の経緯」と題されてはいるが、その内容は、この問題での
真相究明の方法をめぐって、当時の宮沢内閣と韓国政府がどのような交渉を行ったかの
説明のみに当てられており、繰返して述べるが、河野談話作成のために使用された
歴史的事実に関する様々な資料の評価は一切行われていない。しかも、
河野談話作成をめぐっては、日韓両政府の間で様々なやりとりがあったことをとりあげて、
「河野談話の作成過程で韓国側との意見のすり合わせがあった可能性がある」ことを
なんとしても裏付けようという意図が明白である。どのような国際関係問題であっても、
当事国の間で、結論が出るまでには様々な外交交渉が行われるのは当たり前である。
にもかかわらず、この問題では外交交渉が行われたことがあたかも異常事態であった
かのように描写している。しかも日本政府側が「強制」という事実を証明する資料がないと
繰り返し主張したにもかかわらず、韓国側からの一方的な強い要求を最終的には
受け入れざるをえなくなり、日本側が不本意ながら「強制」を認める形で河野談話は
作成されたという印象を強くあたえようという意図で報告書のこの部分は書かれている。

河野談話作成に使用された資料の中で、この報告書で唯一問題にされているのが、
「元慰安婦からの聞き取り調査」であり、その経緯を調査した結論として報告書は
以下のように記している。

「聞き取り調査の位置づけについては、事実究明よりも、それまでの経緯も踏まえた
一過程として当事者から日本政府が聞き取りを行うことで、日本政府の真相究明に
関する真摯な姿勢を示すこと、元慰安婦に寄り添い、その気持ちを深く理解することに
その意図があったこともあり、同結果について、事後の裏付け調査や他の証言との
比較は行われなかった。聞き取り調査とその直後に発出される河野談話との関係については、
聞き取り調査が行われる前から追加調査結果もほぼまとまっており、聞き取り調査終了前に
既に談話の原案が作成されていた。」(強調 ・ 引用者)

かくして「強制」の事実については、この報告書は、その信憑性が疑わしいにもかかわらず、
それは問題にせず、親切にも日本政府側は、元「慰安婦」の人たちの気持ちに十分配慮して、
彼女たちの証言を調査する前から全面的に受入れていたのだ、と主張しているのである。
つまりは元「慰安婦」証言は、その内容は全く検証せずに政治的な判断から受入れを
決めていたのだと主張しており、それは裏返せば「彼女たちの証言は真実ではない」ということを
暗示しているわけで、日本軍性奴隷制の犠牲者をいたく侮蔑した記述である。

第2部「韓国における『女性のためのアジア平和国民基金』事業の経緯」では、
被害者女性たちへの「償い金」支払いや医療福祉事業は、日本側の全面的な善意から
計画されたものであるにもかかわらず、韓国メディアによる「基金」事業の激しい
非難や「償い金」を受け取ろうとする元「慰安婦」へのハラスメントがあったこと、
さらにはこうした民間側からの強い反発に憂慮した韓国政府も「基金」事業の
受入れに消極的になってしまったことが失敗の原因であると、これまた一方的に
韓国側を非難している。それと比較して「フィリピン、インドネシアやオランダでの
『基金』事業では、相手国政府や関連団体等からの理解や肯定的な評価の下で
実施できたと」主張している。しかし、実際には、これらの国々でも当初はかなりの
反発がみられ、「償い金」受取を拒否し続けた被害者が多くいた事実などについては、
報告書は詳しく触れていない。

問われるべき最も重要な問題は、被害者女性の全てではないとしてもその多くが、
また彼女たちを支援する民間団体がなぜゆえに「基金」事業にそれほどまでに
強い不満を持っていたのかということである。この自己検証的問題追求が、
報告書では全くなされていない。
「基金」非難の中で何よりも重要な点は「国民基金」と銘打ちながら、実際に日本国民が
個人として寄付した金額は少なく、大部分が政府から要請を受けた官庁職域や労働団体、
企業等からの寄付金によるものであった。しかも、民間事業という体裁をとりながら、
実際の「償い金」の金額の決定に際しては、いろいろな政治的配慮から一人200万円という
額を政府側が強く主張して、これを「基金」理事会側に承諾させている。さらに、政府側は、
被害者女性が「償い金」を受け取ることで、現在日本で裁判訴訟を行っている場合はこれを
取り下げること、あるいは将来訴訟は行わないことの被害者からの確約を期待していた。
さらに、首相が社会党の村山富市から自民党の橋本龍太郎にかわると、橋本は、
裁判訴訟との絡みで、償い金」と一緒に被害者に手渡す「謝罪の手紙」を送ることを
躊躇したことなど、
(以下割愛)


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