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最初にやろうとしている「緊急事態条項」の狙い!!


 「第一次大戦の敗戦後、ドイツでは、帝国が崩壊し、民主的な憲法が施行されたが、それをヴェルサイユ条約体制の押しつけだとヒトラーとナチスが権力掌握過程でプロパカンダを繰り返してきた事実と、現在の安倍政権が、 現行の日本国憲法を占領軍の押しつけだとプロパカンダを執拗に展開している事実が、まず共通する。

 日本は、ポツダム宣言を受諾して降伏し、戦争を終結。東京裁判の結果も受け入れた上で、サンフランシスコ講和条約によって一応は『独立』を果たした国てあって、ポツダム宣言や東京裁判を批判し始めることは、国際社会における自身の立ち場を掘り崩すことになります。

 しかるに安倍総理は、国会で堂々と、『ポツダム宣言はつまびらかに読んでいない』などと半ば同宣言の否認をほのめかし、東京裁判も見直しを党に指示した。そのための歴史修正の正式な委員会が与党・自民党に発足する。

 安倍政権が、党をあげて歴史を修正・捏造しようとする対象は、「従軍慰安婦問題」南京大虐殺事件」だけではなく、明治以来の近現代の日本史すべてであるという。アジアはもちろん、米国すらも受け入れがたい、ポイント・オブ・ノーリターンまで踏み越えようとしてるかに見える。

 戦後体制を大胆に覆そうとしている点で、安倍政権はナチスととてもよく似ている。

 台頭しつつある時点では、支持者には威勢よく過激なことをいって扇動し、人気を集め、国外に向けては『平和主義者』を装う点もよく似ている。両者とも、野心家であることは間違いないが、その野心の全てを、権力の掌握過程では、人々にすべてを見せてはいなかった。「部分的にはよい子」ポーズを崩していなかった。

 ヒトラーと安倍晋三に、何より似ていて、そして問題なのは、現行の議会制民主主義体制の中で、首相の座を占めただけでは満足せずに、現行の憲法秩序を転覆し、全権を首相である自分に集中させようとしている点である。



 ヒトラーがヒンデンブルク大統領によって首相として任命された1933年1月30日、実はナチスは、議会で多数を占めていなかった。前年の32年11月におこなわれた総選挙では、ナチの得票率は33.1%、議席総数584に対して、196に過ぎなかった。

 しかしその後、ヒトラーはまたすぐに国会を解散して、33年3月に選挙を行うと宣言した。前回の選挙から、わずか2ヶ月半である。その選挙の終盤の、2月27日に謎の国会議事堂放火事件が起こり、これを共産党のせいだと決めつけて、ナチスは何千人もの人々を数日で逮捕する大弾圧を行い、反体制派の力を根こそぎにし、選挙においても多数の議席を得た。そしてついに全権委任法の可決成立によって、全権力を掌握したのだ。

 その独裁者ヒトラーが権力掌握過程でまず最初にやったことの一つが地方政府から権力を奪うことだった。これは独裁の確立に大きな決定打となった。

 今、安倍政権は、憲法の改正を公約として明言し、来年の選挙に臨もうとしている。そこで目標として掲げられているのが、9条の改正ではなく、緊急事態条項の創設である。
 これが実現すれば、一時的であれ首相に全権が集中し、国会は形骸化し、法律と同じ効力を持つ政令が勝手に作り出され、言論や報道の自由はなくなり、国民の基本権は停止され、国民は公権力への絶対的服従を余儀なくされる。抵抗は許されない。
 そして、地方に分権されている権力も停止され、首相のふるう国家権力への一元的で絶対的な服従を強いられる。

 つまり、この悪魔のような条項、緊急事態条項が憲法に書き込まれてしまえば、間違いなく、沖縄の翁長知事以下、沖縄の自治体の権限・権力も停止させられ、沖縄県民の抵抗も鎮圧されてしまうだろう。

      僕が今、とても危惧していることがある。

 今、多くの人々の脳裏で、まだ、沖縄の辺野古の基地建設問題と、来年の夏の選挙の後に安倍政権が導入しようとしている危険な緊急事態条項が結びついていない。憲法秩序が一時停止され、同時に地方自治体の権限がストップされてしまえば、翁長県政は崩壊させられるだろう。日本に最後に残った立憲民主主義の砦である『オール沖縄』が壊滅させられてしまう 。

 壊滅させられてしまう運動や抵抗は、沖縄の米軍基地だけではない。本土の基地問題も、全国の脱原発運動や原発再稼働反対運動も、問答無用で鎮圧され、何から何まで、霞が関の命令通りとなり、そのための政令が乱発されることだろう。

 民主主義も、立憲主義も終わる。麻生氏は、「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と嘯いたが、史実に沿った正確な発言とは言えないという批判は出ても、その政治的な意味は深く検討されず、どうせまた「あの麻生」がやらかした失言のひとつと、軽く見なしてスルーされていった感がある。

    だが、日本の国民もこのまま今からの7ヶ月を空費し、緊急事態条項の中身とその破壊力に気づかないと、『誰も気がつかない間に日本国憲法はいつの間に変わっていた』ということになりかねない。そして自民党のトンデモ憲法草案では、ナチスの緊急事態宣言と全権委任法を足して2で割ったほどの強大で強力な独裁力を現総理に与えてしまうのだ」

 安倍政権は、来年夏の参院選の後に憲法改正の発議を行い、国民投票を経て、「緊急事態条項」を創設したいと公言しています。自然災害時や有事などの「緊急事態」に、憲法秩序を一時停止し、総理大臣に強い権限を集中させるものです。

 「緊急事態条項」の創設は「迅速な対応が可能になる」と喧伝される一方で、国民に対する人権侵害や権力の暴走が懸念されています。

 しかし、そもそも、「緊急事態」の際に国に権限を集中させることは、本当に「迅速な対応が可能になる」のでしょうか。この問題を考えるためにうってつけのディスカッションを、本日20時半より、Ch4でお送りいたします!

 2015年10月21日に収録した「災害対策を理由とする[憲法改正]についての報道及び関係者向け意見交換会 ~緊急事態条項「国家緊急権」の創設は必要か~」です! 岩上さんの決断により、内容の重要性、公益性を鑑みて、緊急再配信するのみならず、しばらくフルオープンにいたします! ぜひ、ご覧になり、ぜひぜひ、多くの人にこの内容をおしらせください!

 この意見交換会では、国家緊急権の創設に理解を示していた憲法学者で慶応大学名誉教授の小林節氏と、創設反対の立場である日弁連の災害復興支援委員会委員でもある永井幸寿弁護士が、「国家緊急権」の創設について、とても建設的な議論をしています。小林節氏は、永井氏との議論の中で、最後には年来の自説を変え、「災害時に、国家緊急権という概念を持ち出さなくてもいい」と明言されました。

 当初、小林節氏は、「震災は戦争と性質が同じ。普通に機能している社会が一気に壊され、社会が機能しなくなる。一番大事なことは攻撃を止めるということ。止められないなら、攻撃から逃げること。そして、残された人的・物的資源をフルに使って、早く国民生活を最低限機能するように戻す。これが緊急対策として国家権力がやるべきことです」と、賛成の立場で論を進めました。

 一方で、災害関連法規に詳しく、国家緊急権創設に反対を唱えている永井氏は、「政府が国家緊急権を持てば、緊急事態ではないのに使ってしまう。いったん握った権力を離さない。あるいは、過度な人権制限をする。災害時には、事前に整備した法律で対処できる。国家緊急権は、政府が濫用する危険がある」と懸念を示しました。

 そもそも、緊急時に権力を総理や内閣に集中することで迅速な対応ができるわけではなく、実態はむしろその逆で、地方の現状もわからないまま、中央がトップダウンの指示系統でアレコレ注目をつけると、かえって現場は混乱し、事態はより一層悪化する・・・阪神淡路大震災、東日本大震災で被災地のリアルを見てきた永井弁護士は、自身の実体験と法律家としての知識を交えて切実に説きました。

 やはりもっとも懸念されるのは、権力の暴走であり、人権の不当な制限であるということがよく分かる内容になっています。

 本日の配信に合わせて、意見交換会の模様を動画で確認していただくのをおすすめしますが、もし動画を確認するのが難しいという方は、以下のURLより、テキスト付き記事をご覧ください。

・2015/10/21 「災害時に、国家緊急権は役に立たない」緊急事態条項・反対派の永井幸寿弁護士との議論で、賛成派の小林節氏に「地殻変動」 ~国家緊急権を徹底討論!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/271317

出典: 「日刊IWJガイド」2015.12.3日号~No.1177号~


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